京都・岡崎のラ・ヴァチュール
京都と言えば是非行きたいところがもう一つありました。タルトタタンで有名なお店、カフェ『ラ・ヴァチュール』。タルトタタンとは、りんごを使ったフランスの焼き菓子のこと。19世紀後半、現在のロワール地方にあるホテル・タタンで誕生したお菓子です。このお菓子、ホテルを経営していたタタン姉妹の失敗から偶然生まれたもの。失敗の内容には諸説あるようですが、お菓子誕生にはよくあるパターンですね♫
そのタルトタタンで有名なお店が京都にあると聞き、前から一度行ってみたかったのです。大正生まれの初代オーナー松永ユリさんは、現地フランスで本場のタルトタタンの味に魅せられ、日本で再現されました。今から40年以上も前のお話です。1ホール20個以上のりんごを使い、深い飴色になるまで弱火でじっくりじっくり火を通していきます。深いカラメル色のりんごもさることながら、ユリさんがこだわったのはその高さ。フランスのペシャンとしたタタンではなく、しっかりと高さのあるものを作ることがユリさんの美学だったそうです。そのために行き着いたのが1ホール20個以上のりんごなんですね。
2006年、30年以上タルトタタンに携わってきた功績が認められ、フランスのタタン愛好会から日本人で初めて会員として選ばれました。そして会員の証、タルトタタンの形をしたメダルが授与されたのです。2014年にユリさんは他界されましたが、お店のいつも座られていた場所に授与式の時のお写真が飾られていました。一つことに30年以上信念を持って続けられる。本当に素晴らしい。心から尊敬いたします。
平成の現在、ユリさんのその味を引き継ぎ、守っていかれているのがお孫さんの麻耶さん。私達が訪れたこの日、お店には麻耶さんの姿がありました。随分前から来てみたくて仕方なかったお店でしたから、お店の中に入って麻耶さんを拝見した時には、何とも言えない感動的な気持ちになりました。この時点ではまだタルトタタン見てないんですけどね(笑)。
可愛くシンプルなメニューには、『タルトタタン』『くるみのタルト』『オペラ』の3つのケーキのイラストがありました。私達は『タルトタタン』と『くるみのタルト』、紅茶を注文しました。私は運ばれてきた『タルトタタン』を見て感激しました。これまでにいろんなお店で、お教室で、学校で、日本でもフランスでも何度も何度も見て食べて作ってきたタルトタタン。「わぁ〜、本物だ〜♫」と思わず声を上げてしまったのは、初めてのことでした(笑)。どこのお店のタタンだって、どこのお教室のタタンだって、どれも全部本物なんですよ!(笑)でもあの時は、見たくて見たくて、食べたくて食べたくて仕方なかった『ラ・ヴァチュールのタルトタタン』が私の目の前にあること、それがとても感動的だったのです。
ユリさんがこだわったしっかり高さのある、深い飴色のタルトタタン。それをきちんと受け継いで提供し続けている麻耶さんのタルトタタン。酸味のあるヨーグルトがかかって、濃厚なりんごとよくマッチしていました。うまみがぎゅっと凝縮されていて、それでいてとろっとした感じがあって、とっても美味しかった♫ 近かったらきっとしょっちゅう通っていますね。
今回注文しなかった『オペラ』も気になっていますので、また近いうちに『タルトタタン』を食べに足を運びたいと思います。
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