ル・コルドン・ブルーの思い出「基礎クラス」

先日、ル・コルドン・ブルー東京校の菓子コースを無事に卒業しました。最短なら3ヶ月で終われるこのコース。私なりにゆっくりと一つずつクリアし、4年という年月がかかりました。こういったケースも珍しいのかもしれませんね。一つ一つ階段を登るたびに学校への印象が変わり、思い入れも強くなりました。この4年を振り返りつつ、数回に分けてコルドンブルーでの思い出を書き綴りたいと思います。

私が基礎クラスに通うことを決めたのは、まだお菓子教室を始める前でした。私は以前パリのエコール・リッツ・エスコフィエで勉強してきましたが、帰国後別の仕事に携わりました。ちょこちょこお菓子には関わっていたものの、本格的なものからは遠ざかっていたのです。いざお菓子教室を始めると言っても、正直私の中では少しブランクを感じていました。ですから基礎だけきちんとやり直したいと思い、改めて製菓学校へ通うことにしました。コルドンブルーはその中の選択肢の一つでした。言わずと知れた歴史ある有名校ではありますが、とても高い授業料。有名というだけで高いのでは?その授業料を出す意味のある学校なのかしら・・・?これはコルドンに決める際の私の中の最大の不安点でした。

コルドン

学校の雰囲気を見るために、本科の先生に教えていただけるという「デビュークラス」に単発で参加しました。その時3回中2回、担当が本田先生でした。本田先生にお会いして私の不安は一気に消えました。先生の理論的でわかりやすい丁寧な教え方にとても感動し、目から鱗が落ちたようでした。「この先生にしっかり教わりたい!この先生に教えていただけるならコルドンに通いたい!」と思ったのです。当時コルドンで料理のアシスタントをしていた友人に尋ねると「基礎クラスは本田先生に教えてもらえるよ」と。「本田先生に習って基礎をしっかり学び直そう」そう心に決めて、私は即座に基礎クラスだけ申し込みました。その頃教室の準備も兼ねて平日フルタイムで別の仕事をしていましたので、毎週日曜日の週1回コースに働きながら通うことに決めたのです。そう、コルドンに通うきっかけを作ってくださったのは、他でもない本田先生だったんです。

デビュークラスにて

デビュークラスにて

こうやって2012年秋、私のコルドンブルー生としての生活がスタートしました。基礎クラス担任は、希望通り本田先生。当時本田先生はデモ中の写真撮影を禁止されていました。「写真を撮ることに気を取られて大事なところを見逃してはいけない。自分の頭の中にその画像と映像をしっかり残しなさい」と。しかも先生の説明はとても詳しくて理論的。一つのデモの間にもたくさんのことを教えてくださいます。言われたことを一つも取りこぼしたくなかった私は、先生の説明をメモに書きなぶりました。が、そのメモはあまりにも汚く、きっと私以外の人には読めないでしょう。自分で見返してもミミズのような字でよくわからない部分もありましたから(笑)。そして実習、私は本当に失敗が多かったんです。ケアレスミスは日常茶飯事でしたし、今までやったことのない大きな失敗もありました。それでも本田先生は必ずその失敗を毎回フォローし、なぜそうなったのか、どうやったらリカバーできるかをきちんと教えてくださいました。そして言われるのです。「次からは結果がどうなるかをきちんと考えてやれ」と。どんなに失敗しても、何回失敗しても、絶対に見捨てずに原因を説明してくださいました。当時のクラスは12名。その生徒一人一人を絶対に見逃さないのです。

基礎クラス集合写真

基礎クラス集合写真

コルドンは実習中、基本ペアで動くことが多いです。ペア同士で同じオーブンを使って、時には一緒に生地を作ったりします。ペアになったのは、私とよく似たのんびりさんのひでみちゃん。いつも出遅れる私達は、結局オーブンからも材料からも一番遠い場所になり、何をするにも一番最後ののんびりペアとなりました(笑)。それでもいつも笑ってる私達。さすがに見るに見兼ねたのでしょうか、本田先生はからかい交じりに悪態つきながらも、何かといつも助けてくださっていました。「こらっ!ゆみこっ!!」「こらっ!ひでみっ!!」「またお前は〜」と、何度怒られたことか 😁。こんな怒られ方って、いつ以来だったでしょうね(笑)。アハハハハ・・・♫ このクラスは実習中とてもピリピリした感じがありました。でもそんな感じで、私達の周りだけ若干ほのぼのした空気が漂っていました(笑)。緊張感に包まれた中でもこの空気感で実習できたこと、ひでみちゃんとペアを組めて私はとても幸せでした。ひでみちゃん、本当にありがとうね♫

ペアのひでみちゃんと

ペアのひでみちゃんと

週1回の授業と聞くとなんだかゆったりしているようにも聞こえますが、平日仕事をしながらの通学です。ノートをまとめたり復習したりの時間はなかなか取れません。それでも私は一つだけ自分にノルマを課しました。「その週に習ったことは次の授業日までに必ず別のノートにまとめる」こと。実習の復習ももちろん必要ですが、それよりもまず知識の記憶と手順のイメトレを重視しました。授業中はとにかく本田先生の言われたことを一言残さずメモに残し、頭に叩き込むのです。先生の動きを映像として頭に残し、イラストに描き起こしました。一度失敗したことは二度と失敗しないように、実習中に失敗したことはなぜ失敗したのかを理解しながらまとめていきました。

マジパン細工を乗せたミセラブル

マジパン細工を乗せたミセラブル

2012年コルドンブルーのクリスマスツリー

2012年コルドンブルーのX’masツリー

そうやって基礎の半分くらいが過ぎた頃、仕事、学校、家庭の気合いを入れすぎたハードな生活がたたったからでしょうか、不運なことに体調を崩してしまいました。最初は体調の変化がわかりませんでしたが、徐々に自分のおかしさに気づいていきます。3時間のデモを見ているだけで疲れ、たった2時間半の実習時間が終わる頃には息切れしてヘトヘトになっているのです。修了試験の日は前傾姿勢が取れなくなり、おかしな姿勢でパリブレストを絞ったのを覚えています。笑い話ではありませんが、今思えばあの状態で1回も休まずよく修了できたものだと、我ながら感心したりもしています(笑)。私にとってあの半年間はとてもとても長く感じましたが、無事に基礎を修了することができました。

基礎修了試験の作品

基礎修了試験の作品

毎日ただただ楽しくて楽しくて仕方なかったリッツ時代とは全く違い、人生初の苦しい中で頑張り抜いたコルドン基礎クラス。とにかく大変で苦しかった記憶が一番大きいです。自分でも考えられないくらいの失敗を繰り返しましたが、本田先生はそんな私を見捨てることなく、いつも丁寧に最後まで指導してくださいました。いつ何時も理論的に、時に厳しく、時に優しく、時に冗談交じりにからかいながら・・・。先生のおかげで改めて知ったことがたくさんありましたし、本当に学ぶことが多かったです。そして何より、先生のご指導のお陰で最後まで頑張ることができました。この時間で得たものを考えると、コルドンの授業料は全く高くありません(笑)!!

基礎クラス修了式

基礎クラス修了式

愛情溢れる丁寧な指導をしてくださった本田先生に、心から感謝の気持ちでいっぱいです。
本田先生、本当にありがとうございました。

試験後、本田先生と

試験後、本田先生と

 

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