オーストリア菓子講習会

少し前のお話。昨年の10月に開催された日本オーストリア食文化協会が主催する「オーストリア伝統菓子 クグロフとリンツァートルテの競演」に参加してきました。溜池山王「ツッカベッカライカヤヌマ」の栢沼稔マイスター、惜しまれながら今年閉店された湘南台「フレイ延齢堂」のメレンゲ細工の第一人者である鈴木廣明シェフ、赤坂「ノイエス」野澤孝彦シェフのお3人による競演です。3人それぞれのリンツァートルテとクーゲルクプフをご紹介してくださいました。

日本においてオーストリアのお菓子と出会うのは簡単なことではありません。現在の日本のお菓子屋さんの大半がフランス菓子が主流ではないでしょうか?長い間フランス菓子を学んできた私ですが、5年くらい前からオーストリアのお菓子にも興味を持ち、視野を広げてきました。興味を持ち始めた当時、「まずはお菓子を知ることから」と思い、オーストリア菓子屋さんを探しました。しかし、関東においてもオーストリア菓子専門のお店を見つけるのはたやすいことではありませんでした。情報を集めてコツコツお店巡りをしたものです。そして、ようやく見つけたお店に行っても、残念ながら実際に店頭に置いてあるお菓子の種類はそんなに多くはありません。

「もっともっとオーストリア菓子を知りたい」と思い、専門に教えてくれる学校やお教室を片っ端から探しましたが、お店以上にまあ見つかりません。国内外から本を取り寄せ、オーストリア菓子とはどんなものか調べました。本を読むことで私の好奇心はますます掻き立てられていったのです。そんな私にとって、今回の講習会はとてもありがたい機会でした。

午前中は「クグロフ」、ランチタイムを挟んで午後からは「リンツァートルテ」のデモンストレーションです。それぞれ、栢沼マイスター、鈴木シェフ、野澤シェフの順番で進められていきます。

まずは、栢沼マイスター。

栢沼マイスター

栢沼稔マイスター

クグロフ・リンツァートルテどちらとも伝統的な配合と作り方で、まさに伝統菓子といった感じです。「クグロフは1日経ったものが美味しいから」と、私たち参加者のためにクグロフを一人一台プレゼントしてくださいました。あのツッカベッカライカヤヌマのクグロフを丸々1台いただけるなんて〜!!参加者からは「うわ〜!」という歓声が上がりました。
そして、あの栢沼マイスターに初めてお会い出来るということので、どんな方なのかとワクワクと同時に緊張もしていました。デモはもちろん慣れた手つきで進めて行かれてましたが、「難しいことは答えられないから質問はしないでね・・・」と冗談交じりに仰るお茶目な一面もおありな方でした(笑)。帰り際にご挨拶をしたところ、「こんな感じで不定期にやってますので、良かったらまた来てくださいね」と優しく仰ってくださり、とっても気持ちが癒されました。

栢沼マイスターのクグロフ

栢沼マイスターのクグロフ

しっとりしていて、無駄な甘さがなく、プレーン生地とココア生地が見事にマッチした美味しいクーゲルクプフでした。お手本にしたいクグロフです。

栢沼マイスターのリンツァー

栢沼マイスターのリンツァー

リンツァートルテも伝統的な配合と作り方、とおっしゃっていましたが、フランス菓子ではあまり使わない素材を使ったりしていて、私にとっては新しい発見がたくさんありました。でももしかしたら、これはオーストリア菓子では当たり前なことなのかもしれませんね。とっても勉強になりました。

続いて鈴木シェフ。

鈴木廣明氏

鈴木廣明シェフ

「栢沼マイスターが伝統的なものは作られるということなので、私は変わり種を持ってきました」と、オリジナルのレシピを教えてくださいました。メレンゲ細工の達人でいらっしゃる鈴木シェフならではのお菓子で、クグロフ、リンツァーともにメレンゲを使っていらっしゃいました。オーストリアで学んで来られたメレンゲ細工、今やオーストリアでも鈴木シェフの右に出る方はいらっしゃらないそうです。オーストリアに呼ばれてメレンゲ細工講習をされていらっしゃるそうですよ。まさに、逆輸入ですよね!今年はイタリアでも講習会をするご予定がおありとか。お店を閉められて、今後は世界中にメレンゲ細工を伝えに行かれるそうです。大きな夢がおありになって、とても素敵です。

鈴木シェフのクグロフ

鈴木シェフのクグロフ

ナッツやフルーツ、スパイスがたっぷり入ったクーゲルクプフでした。これは本当に美味しくてあっと言う間に食べちゃいました。絶対作ってみたいと思います。

鈴木シェフのリンツァー

鈴木シェフのリンツァー

ベリーのジャムだけでなく、ほかにもフルーツがたくさん入っていて、仕上げにメレンゲを絞り出した斬新なリンツァーでした。パウンド型で焼いていたので、トルテではないのかな・・・。

最後に野澤シェフ。

野澤孝彦シェフ

野澤孝彦シェフ

野澤シェフは油脂分にこだわりを持っていらっしゃるようで、クグロフ、リンツァートルテともにバターではなく、別の油脂を使って作っていらっしゃいました。バターは手に入りにくいですし、コストもかかります。お店を経営される上でコストダウンは必須ですので、そういったことも含め、バターに負けない味で、かつ扱いやすい油脂分を研究されたそうです。さすがは経営者ならではの発想ですね。

野澤シェフのクグロフ

野澤シェフのクグロフ

クグロフは、しっとりしたクーゲルクプフでななく、フランスアルザスでよく売られている発酵生地のクグロフを教えていただきました。小さい型で可愛く焼き上げていらっしゃいました。

野澤シェフのリンツァー

野澤シェフのリンツァー

三人三様の配合と作り方、そしてこだわりがたくさん詰まったオーストリア菓子でした。勉強になることが多く、実り多き1日でした。このような機会がありましたら、また是非参加させていただきたいと思います。

———————————————————————————————————————————————-お菓子教室 Ledru-Rollin(ルドリュ ロラン)での体験レッスンはこちらへどうぞ


Comment





Comment



CAPTCHA


関連記事